「あのー、ロボトミー手術の窓口の人ですか」
「はい」
「ロボトミー手術を受けたいんですが」
「やめなさい。ロボトミー手術なんて、危ないし、何もいいことないですよ」
「でもロボットになりたいんです」
「ロボトミー手術のロボトのところがロボットみたいだからと言って、ロボットになるのとは違うんですよ」
「えっ」
「あなたね、目からね、細い尖った棒を刺してね、脳みそをぐちゃぐちゃにされたいんですか」
「いやだあ、こわい」
「ロボトミー手術というのはそういうことのことなんですよ」
「そういうことのことか……」
「そのように脳を壊して、むりに穏やかな人間にさせるっていうんで、昔は流行ったんです」
「じゃあ、あなたはどうしてロボトミー手術の窓口の仕事をしているんですか」
「わたしはね、あなたのような、ロボトミー手術のことを勘違いしてやって来る人に教えてあげるためにいるんです」
「そうか、それは助かります」
「教えてあげるいっぽうで、また来たな、と呆れているんですよ」
「ひどい」
「さあ、わかったら帰りなさい。まったく困ったもんだ。ロボットになりたいだの、サイボーク化だのと……」
「ところで、蜘蛛に自我を与える研究所の窓口はどのあたりですかね」
「こりゃ筋金入りだな。その辺に看板が出てるんじゃないですか」
「そうだ。ここへも、”ロボトミー手術の窓口”という看板を見て来たんだった」